秋も深まり、木々の葉が色づく11月。肌寒さが増す季節ですが、温かいお茶とともにいただく和菓子は、心をほっとさせてくれます。12ヶ月の和菓子づくり、11月のメニューは豆大福と切山椒でした。


まずは豆大福です。
寒さが増すこの時期、塩味の効いた黒豆、やわらかな餅と甘いあんこの組み合わせが絶妙です。
東京ではエンドウ豆を使うことが多いですが、アメリカではなかなか手に入らないので、京都流に黒豆を使います。

一口食べると、ほっとした気持ちになります。
シンプルながらも飽きのこない、季節を感じさせる定番の和菓子です。

私が好きなのは麻布十番の「しろいくろ」、
ここの丹波の黒豆の豆大福、とっても美味しいのです。
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そして11月ならではの和菓子が、切山椒です。
切山椒は江戸時代から続く伝統的なお菓子で、
特に酉の市の縁起物として親しまれています。

酉の市は関東を中心に11月の酉の日に開かれ、
商売繁盛や開運招福を願って縁起物の熊手を買うことで知られています。

その賑わいの中で楽しむことができるのが、切山椒。


切山椒は、上新粉と砂糖、山椒の粉で作ります。
はじめて聞いた時は「和菓子に山椒?!」と驚いたものですが、これがなかなか合うのです。


そして、そこには深い意味あいもあるのですね。
山椒の強い香りは、それが古くから魔除けとして使われ、
葉や花、実、枝すべてが使えるということ、
たくさんの実をつけるということから子孫繁栄、縁起物とされてきたそうなのです。

山椒は小粒でぴりりと辛い
高校生の時に、お友達のまいちゃんから教えてもらったことわざです。

【意味】
からだは小さいけれど、意志が強く、鋭い気性や優れた才能があり、
非常に優秀で侮ることのできない人のたとえ。

ということで、なるほど!と思ったことをよく覚えています。
でもその時は、うなぎにかける山椒はどうも大人の味で、好きではなかったのです。
それからウン十年、和菓子づくりに使うことで好きになるとは思いもしなかったです。

出来上がった餅生地は細長い拍子木型に切ります。
切山椒の拍子木の形は火の用心を象徴しているそうです。
また、餅菓子を切ること自体が商売繁盛を願う行為とされ、
江戸時代から人々の暮らしに根付いたお菓子なのです。


浅草・鷲神社では、いくつかの屋台で販売され、店ごとに色や味が微妙に異なるので、
あらためて食べ比べを楽しんでみたいなと思います。

2025年の酉の市は、
一の酉 11月12日(水)
二の酉 11月24日(月)
です。

せひお近くの大鳥神社の酉の市に行ってみてください。
千足の鷲神社、新宿の花園神社など、有名な神社がたくさんあります。

切山椒を作りながら、その背景にある酉の市の風習や山椒のもつ意味、
そして拍子木型、色に込められた願いを知ると、
和菓子作りがただの料理ではなく、文化や歴史を伝える営みであることを改めて感じます。


11月の和菓子作りでは、季節の味わいを楽しむ豆大福と、
縁起と歴史を感じられる切山椒の二種類を通して、
和菓子の奥深さを体験することができました。

どちらも、作る楽しさだけでなく、
食べる人に季節や文化を届けるお菓子です。


Wagashi Studio

アメリカでオーダーメイドの和菓子作品の制作、オンライン和菓子教室やワークショップ、デモンストレーション、展示、レシピ提供などを行っています。著書「甘くてかわいい、食べられる宝石 琥珀糖のレシピ」 日本・台湾・香港にて上梓。

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